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主要な価値創造モデルとその評価(75):戦後日本のドル収入最大化モデルー21

 日本企業の収益性は、労働生産性の低さと軌を一にして、戦後一貫して目立って低かったことは、このシリーズの第1回目に指摘した通りです。経済学で言う「資本コスト」という概念は、市場(投資家)が求める必要(最低)収益率を意味し、金融、資本市場で成立する金利や株価に反映されるものです。負債についていえばTBやCD,コマーシャルペーパー、国債、社債などの市場価格から逆算される利回りを指します。そして株式に関しては、いわゆる「効率的」市場で形成される株価を、銘柄Aの将来にわたる1株当たり予想配当の流列の「割引現在価値」合計に等しくするような「割引率」を、「株式資本コスト」と定義します。それを与えてくれる理論モデルが、いわゆるCAPMです。無リスク金利をrf、株式市場に対する期待収益率をRm、銘柄Aのベータ値をβAで示せば、Aの株式資本コスト=rf +(Rm-rf)×βAで推計されるのです。
 しかし上で示すような、市場価格ベースの経済学的な資本コストは、我々にはちょっと抽象的過ぎます。そこで市場価格ベースではなく、財務会計ベースの収益性指標を用いて、資本コストの問題を考えてみたいと思います。例えば、例の「伊藤レポート」で示された、「ROE=8% が日本企業の株式資本コストだ」という考え方がそれです。収益性を測る会計指標としてよく用いられる指標には、売上利益率、総資本利益率(ROA),株式資本利益率(ROE)などがあります。また、これらの収益性指標の過去の実績値は、必ずしも必要収益率そのものではありません。仮に資本コストと呼べる収益率があるとしても、実績値、あるいはその平均値はそれを上回ることもあれば下回ることもあるわけです。あくまでもトレンドや傾向を見るための一つの参考データに過ぎません。こうしたことを承知の上で、代表的な会計上の収益性指標を用いて、1970年以降のわが国製造業大企業の収益性のトレンドを、アメリカとの対比で見て見たのが、下の表です。日本は野村総合研究所集計の350社、アメリカはS&P社集計の製造業大企業です。


日米製造業大企業の収益性比較(%)

        日     本      ア メ リ カ
      売上営業 株式資本  売上営業 株式資本
      利益率   利益率   利益率   利益率
1970    5.4     14.9     9.4    10.3
1971    4.6     11.2     10.0   10.8
1972    4.8     12.0     10.6   11.7
1973    5.0     14.4     11.7   14.2
1974    4.2     10.0     11.6   14.2
1975    3.3     7.9      10.4   12.1
1976    3.8     9.7      10.7   14.0
1977    3.3     9.3      10.6   13.9
1978    3.6     9.9      10.6   14.6
1979    4.2     12.3     10.7   16.5
1980    4.0     11.7      9.4   14.9
1981    3.6      9.4     8.9    14.4
1982    3.2      8.9     8.2    11.1
1983    3.1      8.3     9.0    12.1
1984    3.4     9.0      9.3    14.6
1985    3.0     8.3      8.8    12.1
1986    2.4     6.0      8.2    11.6
1987    2.9     6.7      9.0    15.1
1988    3.5     7.9     10.4    19.1
1989    3.3     8.1     10.2    18.5
1990    3.3     7.7      9.5    16.1

 次回は、この表から指摘できるいくつかの傾向について考えてみたいと思います。」」       
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