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主要な価値創造モデルとその評価(92):戦後日本のドル収入最大化モデルー38

 これまで37回にわたり、戦後日本のドル収入最大化モデルを取り上げてきました。このテーマは、大げさに言うと私の「ライフワーク」でしたから、つい力が入って長くなってしまいました。私は長年日本企業の「低収益戦略」について、批判的でした。しかし今世紀に入って、遅ればせながらわが国でも株主価値重視経営が浸透し始め、同時に資本コストが大幅に低下しました。戦後一貫して資本コストを下回る資本収益率しか生み出せなかった日本企業ですが、ROE水準の上昇と資本コストの低下によって、今では小幅ですがプラスの株主価値を安定して創造するようになりました。 
 ROEが株式資本コストを下回る状態を「絶対的」低収益経営と呼ぶならば、平均ROEが資本コストを上回るようになった最近の日本企業の経営は、「相対的」低収益経営と言えそうです。少なくとも、戦後一貫して続いた、投資家の利益の犠牲のもとに規模成長を追求する、「価値破壊」経営とは、決別を果たしたと考えていいでしょう。したがって今では、私は日本企業の低収益経営を、以前よりは前向きに評価するようになりました。欧米企業の「株主価値最大化」経営との対比で言えば、日本企業の経営は「資本コストカバー型」経営とでも言えそうです。
 結論的に言えば、戦後日本のドル収入最大化モデルは、一つの有効な経済発展モデルと言えそうです。というのも、このシリーズの第8回で述べたように、これによって日本はかつては世界第2、今でも第3の経済大国になり、同時に長年世界最大の純債権国の座を維持してきたのですから。2014年の日本の対外純債権額は366兆円で、24年間連続して世界1になっています。これこそ我が国に対する国際的な信用、信頼を担保する、最大の要因になっているのです。政府の負債額がGDPの200%以上に達し、あのギリシャよりもひどいと言われる中で、有事の際にはドルよりも何よりも資金の一時的な避難先として円が選ばれるのも、そのおかげなのです。
 このシリーズを終えるにあたり、最後に次のことを指摘しておきたいと思います。欧米流の株主価値最大化モデルは、いわば資本主義市場経済のもとでの普遍的な価値創造モデルと言えるでしょう。これに対して我が国が戦後採用してきた低収益経営モデルは、それに対するアンチテーゼであり、「特殊解」なのです。高収益経営を壊しに行くわけですから、収益性最大化を目的関数に掲げる欧米企業にとっては大変な脅威で、強力な「異教徒」なのです。しかしそれが成功するための絶対条件は、他のプレイヤーは決して低収益戦略で対抗して来ない、ということなのです。もし中国や韓国、ロシアといった新興経済国の企業が、日本同様収益性を度外視した競争を仕掛けてくるようなことがあれば、参加者全員が疲弊し、破綻してしまうかもしれません。そういう意味で、これまで長年有効だったモデルではありますが、今後もずっと成功し続けられる保証はないのです。収益性と規模成長のバランスをどこで取るのかは、永遠の課題と言えるでしょう。」」

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宮田 真一

ブログからの突然のメールで申し訳ございません。
初めまして。投資情報サイトGogoJungleを運営しています株式会社ゴゴジャンの宮田と申します。

ブログを拝読しましてメールをお送りしました。

今回、ブログからメールをお送りしました理由としましては、株式投資の知識を、インジケーター・システムトレード・動画・電子書籍・メルマガなどを商品として投資情報サイトGogojungleでご掲載していただけいる力は十分にお持ちではないかと思い、メール致しました。

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宮田

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by 宮田 真一 (2018-08-02 17:44) 

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